エミリィ・ディキンスン資料センター便り【2022年07月】
2022(令和4)年7月の「エミリィ・ディキンスン資料センター便り」The Whisper from Amherst~エミリィのささやき~
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エミリィはどの季節よりも夏を好み、エミリィが書いた1800余りの詩の中で、夏について言及した作品が145篇もあります。次に多い季節が冬ですが、39篇でとても夏の数には及びません。家から出ることがあまりなかった事が強調されがちですが、10代から20代前半は家族旅行も楽しみました。しかし、水やりは十分かしら、あの花は帰る頃にはもう終わっているかしら、といつも家の庭のことを気にしながら出かけるのでした。
‘It will be Summer-eventually.’
It will be Summer-eventually.
Ladies-with parasols-
Sauntering Gentlemen-with Canes-
And little Girls-with Dolls-
Will tint the pallid landscape-
As ‘twere a bright Boquet-
Tho drifted deep, in Parian-
The Village lies-today-
The Lilacs-bending many a year-
Will sway with purple load-
The Bees-will not despise the tune-
Their Forefathers-have hummed-
The Wild Rose-redden in the Bog-
The Aster-on the Hill
Her everlasting fashion-set-
And Covenant Gentians-frill-
Till Summer folds her miracle-
As Women-do-their Gown-
Or Priests-adjust the Symbols-
When Sacrament-is done-
するとやっと夏になるのだ
婦人たちがパラソルを
散歩する紳士たちがステッキを
そして少女たちが人形を手にするとー
青味がかった風景も
明るい花束のように染まるだろう
たとえ今は 村はパロス焼きのように
重くうず高く横たわっているけれど
長い月日に腰をかがめたライラックも
紫の荷物を背にして揺れるだろうし
蜜蜂も祖先の伝える羽音の旋律を
軽蔑などしないだろう
沼地の野バラは赤くなる
丘の上のえぞ菊は
あのいつもの形を身につける
そして竜胆はひだ飾りをまとうのだ
聖餐式の終わったあとで
婦人たちがガウンをたたむように
牧師が十字架を元へ戻すように
やがて夏が自分の奇蹟を片附けてしまうときまでー
(訳: 中島 完 「続自然と愛と孤独と」 国文社 より)
ボストンで叔母のLaviniaと訪れた園芸展ではギリシャ風寺院、苔と花々で飾られたスイス風コテージ、東洋風の塔などに魅せられたエミリィでした。 Nellie’s Mom



えぞ菊 パロス焼きの石材 エミリィが1846年に訪れた
「ボストン園芸展」会場