エミリィ・ディキンスン資料センター便り【2022年04月】

2022(令和4)年4月の「エミリィ・ディキンスン資料センター便り」
The Whisper from Amherst~エミリィのささやき~ 

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皆さんは動画サイト、‘You Tube’等をご覧になりますか。先日偶然にもアメリカ人がエミリィの詩に曲をつけて歌っている動画を見つけて、びっくり!オペラ歌手らしき女性が歌っているものがあれば、小学生の合唱団もあります。教会の聖歌隊らしきグループもあり、振り付けをつけて非常に楽しげに歌っている様子を見る事ができます。1865年頃の作品が150年以上の年月を経た今でもです。思わず一緒に口ずさんでしまいました。この詩もそのひとつです。

‘Bee!  I’m Expecting you!’

Bee!  I’m expecting you!
Was saying Yesterday
To somebody you know
That you were due -

The frogs got Home last Week-  
Are settled, and at work -
Birds, mostly back -         
The Clover warm and thick -

You’ll get my Letter by
The seventeenth; Reply
Or better, be with me –
Yours, Fly.    

蜜蜂さん お待ちしているのです
昨日も あなたのお知り合いの一人に
話していたところです
あなたの番ですよと―

蛙たちは先週家に帰ってきました
もう落着いて仕事を始めています
鳥たちも大半 戻って来ました

クローバーは元気に繁っていますよ
このお手紙は17日頃には着くでしょうけれど
お返事を忘れないでね それよりも
早く私の所へいらっしゃい
では 友だちの蠅より

(訳: 中島 完 「続自然と愛と孤独と」 国文社刊 より)

在日アメリカ大使館の大使を務めたCaroline Kennedy が編集した‘Poems to Learn by Heart’(キャロライン・ケネディが選ぶ「心に咲く名詩115選」)の1点にも選ばれています。この本はJon J. Muth の美しいイラストが詩に彩りを添えている子供向けの詩集です。蜂と蠅が仲良しで、春が来て蛙や鳥が庭や野原に戻って来てるので、あなたも早くいらっしゃいと、友達に手紙を書いているというかわいらしい詩なので、ケネディ氏が選んだのでしょう。
一方、蠅はエミリィ、蜂はエミリィが思いを寄せている人、蛙はエミリィの兄か父、そして鳥たちはエミリィの母親か家族の誰か女性を指しているという説もあります。クローバーが厚く深く生い茂っているという表現はおそらくエミリィが思いを寄せている人への「強い欲望」と、春という季節を「強く待ち望む気持ち」を重ね合わせて表現しているとも言われています。詩の解釈とはつくづく、難しく自由であると感じます。
各4行の3連で構成されてはいますが、完全ではありません。それがエミリィの詩の特徴であり、エミリィが好んだ奔放な形態です。この、一定のリズムで心地よく読むことが難しいというのが、エミリィの詩が生前に高い評価を得る事ができなかった原因の1つでもあるのです。
Nellie’s Mom
      
    
アメリカで販売されている楽譜    ケネディ氏の翻訳本          イメージ画